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八意先生のお料理教室。

こんにちは。このブログは毎週土曜ぐらいに更新されています。
続きからSSですが、タイトルとあまり合致してねぇ…
初SSなので、生温い目と優しさを持ってみてね☆

人里から若干離れた場所にある一軒家。
その家に藤原妹紅はいた。
妹紅が手に持つのは包丁、相対するは食材、料理の真っ最中である。
不慣れな手つきではあるが、その顔はどこか鬼気迫るものがある。
それもそのはず、彼女はこの家の主であり、自らの想い人、慧音のために料理を作っているのだ。
頼まれたわけでもないのだが、思いついてしまったのだから実行に移さなければならない。
もちろん慧音には秘密である。



しばらく時間が経過した後、ふと妹紅は手を止めた。

「……慧音、喜んでくれるかな」

真面目で常識人でもある慧音が、まず喜ばない訳がない。
ならば、その上での状況も発生するであろう。
そして、考えうるケースを想定してみる。
慧音ならば、涙を流し私を抱きしめた上で、

「ありがとう妹紅!とても美味しい料理だった、私と結婚してくれ!」
「け……慧音ったら、仕方ないなぁ……うん、いいよ!」

とか言っちゃってさー……えへへ~。
照れ隠しのためか、包丁をまな板に叩きつける。
まるで親の仇を討つような連撃にまな板も悲鳴を上げざるを得ない。
食材も見るも無残なことになりはじめてきた、というより原型が大変である。
妄想がそろそろ大変な状況に達しようとしていた時、突然戸を叩く音が聞こえた。
慧音だろうか、そう思いながら玄関へと向かった。

「おかえり慧音!」

戸を開けるや否や抱きついた、間違いなく抱きついた。
柔らかな感触が私に安らぎを―――

「貴女は、いつもこうなのかしら?」

―――与えてくれたような気がしたが、そんなことはなかった。
あきらかに望んでいた声ではないため、私は抱きついたまま上を見上げた。
そこにいたのは慧音ではなく、

「あ……ぅ……」
「覚えているかしら、八意永琳よ」



「あら、あなた長生きしてる割に料理もできないのかしら」
「う、うるさいっ!」

突然、この女は家に上がり込んできた。
それだけでなく、あたしの料理に口出しし始めてきたのだ。
まさに口煩い姑である。
イライラし始めてきた私は怒りをぶつける様に聞いた。

「何しに来たんだ?」
「慧音に用があって来たんだけど、いないみたいね」
「じゃあ帰れ、今すぐ帰れ」
「あら、冷たいのね。助言してあげてるのに」
「お前のは助言じゃなくて口出しっていうんだよ」
「まぁひどい」
「それに、料理なんて私一人でも十分できるさ」
「……包丁を貸してみなさい」
「あっ―――」

私の手から包丁を取り上げると、永琳は慣れた手つきで食材を捌いていく。
呆気にとられる私を横目に見ながら永琳は手本を見せていく。

「ほら、こうするのよ」
「……ありがと」
「やけに素直じゃない。変な物でも摘み食いでもしたのかしら」
「人が素直に感謝してるんだぞ!」

私の作ったものと永琳の作ったものを比べてショックを受ける。
作り手が違うだけでこれ程の差が出るものなのだろうか。
悲しいわけではないが、それでもやはり悔しさはある。
こんな料理で慧音が喜んでくれるはずないよね……
そう思った瞬間、思わず涙が出そうになるが堪える。
その様子に気づいた永琳が、突然私の頭に手を載せる。
そして子供をあやす様に優しく撫ぜた。
突然のことに驚いた私は、その手をはたき落とし、

「な……何するんだよっ!」
「あらあら、子供が泣いているからあやしただけよ」
「子供じゃないし、泣いてなんかない!」
「皆、そう言うものよ」

そう言って永琳は再び私の頭を撫ぜ始めた。
恥ずかしいやら嬉しいやらで頭が一杯になったが、
ふと母様のことを思い出してしまった。
まるで、永琳は母様みたいだ、そう思ってしまった。
そして、私は自分でも思ってもいないことを口に出していた。

「……なぁ」
「何かしら?」
「……あたしに料理教えてよ」
「どうしてかしら?
「慧音はさ、優しいから褒めてくれるよ。でも、やっぱり美味しいものを食べてもらいたい。慧音に本当

に喜んでほしいんだ。だから……その…教えて下さい」

私は頭を下げた。
相手は憎き輝夜の従者。
でも、今はそんなことはどうでもよかった。
唯一つ、慧音に喜んでもらいたい、それだけが大事だった。
そのためなら、何度でもこんな頭ぐらい下げて―――

「別にいいわよ」
「―――えっ!」

思わず声をあげてしまった私を不思議そうな顔で見る永琳。
そのまま微笑を浮かべ、

「貴女の手つきは危なっかしいし、見てるこっちが冷や冷やさせられたわ。幾ら不老不死だとしても、そ

んな子を見てるだけって言うのもねぇ……」
「……じゃ、じゃあ教えてくれるの?」
「ええ、教えてあげるわよ。でも、私は優しくないわよ」
「わ、わかった」
「それじゃあ始めましょうか」

そう言って永琳は包丁を持った私の手を握って食材を切り始めた。
私は永琳の優しさに感謝しつつ、慧音のために頑張ろうと思い、手を動かした。



妹紅の作った料理は永琳のおかげで無事完成した。
夕方、帰宅した慧音を出迎えた妹紅は自らが作った料理を披露した。
慧音はその料理を食べ、その出来の良さに感激した。
そして、妹紅が料理を作ったことを、まるで自分のことのように喜んだ。
慧音に褒められた妹紅は隠しきれない喜びを浮かべたのだが、
慣れないことをした疲労もあり早めに就寝したのだった。
居間に残った慧音と永琳は静かな声で話す。

「急な頼みを聞き入れてくれてありがとう」
「別にいいわよ。私も楽しかったもの」
「そう言ってくれるとありがたい」
「……貴女って本当に親バカよね。妹紅が料理を作るから手伝ってやってくれ、なんて」
「う……うるさいなぁ。心配で仕方なかったんだ!」
「はいはい、彼女が起きるわよ」
「……すまない」
「……あの子は貴女のことが大好きみたいね、ずっと貴女の話をしてきたわ」
「そうか、それは嬉しいな」
「ええ、でも私は少し妬けたわ」

急に永琳は慧音にもたれかかり、顔を近づける。
永琳の突然の行動に驚く慧音に対して、
そのまま慧音の耳に口を近づけ囁く。

「ねぇ慧音、私も今日頑張ったわ」
「…そう…だな」
「だから」



「ご褒美が欲しいわ」

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