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雨宿り

「忘れ物はないかい?」 「ないよ、これで全部! ……レッツゴー!!」

特に、科学は時に壮大なロマンチストが関係あるわけではありません。
ということで、定期更新です。もみあやです。
今回の作品が、これから色々と繋がってくるかもしれませんし、しないかもしれません。
いつもの通り、続きからどうぞ。


「……雨…止みませんね……」
「……そうね」

大きな木の下で雨を凌いでいるのは、文と椛。
朝から取材のために幻想郷中を飛び回っていた文。
昼過ぎからは、無理やり椛も手伝わされて2人仲良く取材していたのだ。
最も椛は、口では色々と文句を言いながらも、文に頼られたことに嬉しさを隠し切れず、文も椛が何故か嬉しそうな表情であるために良いことをしたと、2人して良い気分で取材を進めていた。
そんな2人を襲ったのは突然の通り雨。
不意を突かれた2人には、当然対処する術もなく、慌てて近くの木の下で雨宿りをするしかなかった。
すぐに入ることはできたのだが、それでも2人は少し雨に濡れてしまった。
椛は髪から滴る水を拭うために懐から手拭いを取り出すと、わさわさと髪を拭おうとした。
が、ここはまず文を優先しよう、そう考えた椛は文の方を向き、手拭いを差し出そうとする。
そこで椛は固まり、慌てて視線を反らした。

「……どうしたの椛?」
「…ぅ……ぁ……」

文もまた、椛と同様に髪から雫が滴り落ちていた。
しかし、椛にとってはそこはあまり問題ではなかったのだ。
問題は、文が椛よりも木の下に入るのが遅かったために、椛よりも雨に濡れてしまったという点である。
そう、椛が文を直視できないのはただ一つの理由から。
それは文の着ているブラウスが、雨で、そういうことになっているからだ。
純情椛さんにはあまりにも破壊力の高い攻撃だ。一瞬でも気を緩めると鼻から赤い液体が出てくる、椛はそう確信し、気を引き締める。
そして椛は、なるべく文の頭を見てそれ以上下を見ないように話しかけた。

「あ……文様っ! 大丈夫でしたか!?」
「えっ? ええ……ちょっと濡れたけどカメラは大丈夫よ」
「そ、そうでしたか……これを使ってください」

そう言って椛は手にしていた手ぬぐいを文に差し出す。
文は一瞬それを凝視した後、ありがとうと言いながら手に取った。
そしてそのまま、カメラに付着した水滴を拭う。
そっちじゃない、と椛は思わず心の中で突っ込むが、それを口に出す勇気などない。
今の椛は下を見ないようにするだけで必死なのだが、そんな椛にお構いなしの文は、そのままカメラの点検を始める。
その状態がしばらく続いた後、不意に文は思い立ったように椛の方に向き直り近づく。
文から意識を反らしていた椛は、ついつい反応するのが遅れてしまい、気づいた時にはすぐ目の前に文がいたのだった。
思わず後ずさろうとする椛だったが、文は椛の腕を掴むと、そのまま手に持っていた手拭いで椛の頭を拭い始める。
文の突然の行動に驚く椛に対して、文は、

「私に気を配る前に、自分の事をしなさいよ」
「―――えっ! あ、文様、私の事よりもご自分を労って下さいよ、先日体調崩されたばかりでしょうが!!!」
「んー……でももう治ったし……私はそれよりも椛のことが心配なの」

有無を言わせないように、荒っぽく椛の頭を押さえつける文。
押さえつけられた椛は、思わず視線が下の方に行ってしまい、慌てて視線を逸らそうとするが自分の意思とは反対に、体が反応してくれない。
思わず凝視してしまった自分を恥ずかしく思いつつも、とにかく体が言うことを聞かないのだ仕方ない、と椛は自分に言い訳しつつ視線を逸らすことを止めた。
少しして、突然文は口元に手を当て、

「――――っ、くしゅん!!」

文は大きめなくしゃみの後、わずかに身ぶるいをする。
どうやら長い時間濡れた服を着ていたために、少々体温が下がってしまったようだ。
それに気付いた椛は、慌てて上着を脱ぐと、

「あ、文様!? これをどうぞ!」
「……え!? でも、椛寒くないの?」
「大丈夫です! 自分鍛えてますから!!」
「でも……流石に受け取るわけにも……」
「いいから! 早くして下さい、文様に風邪をひかれては私が困ります!」

押しつけるようにして上着を渡した椛、そこまでされては文も断ることはできない。
文は困ったような笑みを浮かべて、椛に言った。

「……そうね、せっかくだからありがたく受け取るわ」
「はい、また体調を崩されないようにしてください……あ、自分はあちらを向いていますので」

椛は文に上着を渡すと、そのまま回れ右して文に背を向ける。
椛の真意を理解した文は、地面に座り込み濡れた服を脱いで椛から受け取った服に着替えることに。その間、椛は目を固く閉じて精神統一することで、外部から与えられる情報全てを遮断した。
たとえ後ろから衣ずれの音がしようとも、椛はうろたえない、耳を傾けない。耳がピクピク動いていたとしても、何も聞いていないのだ。
と、ここで文は何か思いついたように、

「――――あ、こうすればいいじゃない!」

次の瞬間、座り込んでいた文が、椛の片腕を掴んで引っ張り無理矢理座らせる。
椛は集中していたために、反応が遅れてしまい必然的に文の隣に座り込む形となってしまった。
突然の出来事に何が起こったのか理解できない椛に対して、文は椛から借りた上着の半分を椛に掛ける。
状況としては、一つの上着を2人で一緒に着込むというものになっている。その上、2人の距離はかなり近く、自らの置かれた状況を理解した椛は慌てて離れようとする。
しかし、文が椛の腕を掴んだままの為に逃げることは叶わない。
椛が慌てふためく様を見て思わず笑みが零れる文、そんな彼女に対して椛は必死に尋ねた。

「な、何をやっているんですか文様!!!」
「あややや、どうかしたんですか椛?」
「どうかした、ではありませんよ! ち、近いですっ! 主に距離的な意味でっ!!」
「気にしちゃだめよ、私だけだと申し訳ないなーと思ったのよ」
「あわわわ……!」
「椛が私の心配をするのはありがたいけど……私だって椛の心配をしてるのよ? 私は椛のお姉さんみたいなものなんだから」

そう言って微笑む文を見て、椛はハッとした表情を浮かべる。
どんな時でも自分のことを心配してくれている文に対して、なにやら複雑な気持ちが浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
心配されていることに嬉しさはあるものの、やはり自分をそういった視点でしか見ていない、ということを言われたようなものだ。椛としても悲しいものがある。
などと思考を走らせる椛だが、実のところ腕に当たる感触を忘れるためである、というのは言うまでもなく、結局、雨が止むまで2人はずっとそのままであったという。
なお、後日何故か椛が風邪をひき、一騒動起こったというのはまた別の話。


 

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