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衣玖の災難

体調を崩し過ぎて、ぽんぽんが痛いです。
頭痛が痛くて、お腹が痛くて、オムライスが食べたくて、ラブプラス面白いです。
久々にこういうゲームしてみたけど、うん、ポケモンできるかなぁ…
みんながポケモンやり始める時、自分だけ違うことやってそうです。
でも、鹿山さんってそんなところあるから、大丈夫ですよね。うん、はぶられたって泣かない。

ということで、続きからSSです。
もう、何が何だかよくわかってない状況になってますが、きっとゆかいくてん です。
緋想天で紫さんをプレイしていたところ、ついカッとなって書いちゃったのが原因ですが、そのころちょうど、友人からゆかてん書いてって言われてたので、よーしがんばっちゃうぞー、とか思って書いてたらこのザマです。でも、私は謝らない。
この作品は「衣玖の隠し事」の続編です。
特に読まなくても問題はありませんが、読んでおくと話の内容がつかみやすいかもしれませんし、つかめないかもしれません。
そんなことよりも俺はサッカーをするぜ、という方は戻るを押してください。


ふわふわ。彼女はまるで浮かぶように空を飛ぶ。
彼女の髪が風になびく。
そうして彼女は、しばらくの間空の散歩を優雅に楽しむ。


太陽がそろそろ真上に来る頃。
ふと、彼女は思いついたように口を開いた。

「……そう言えば、お腹が空きましたね」

ここで彼女は、自分は朝から何も食べていなかったということに気付いた。
呟いてすぐ、彼女のお腹から小さな音が聞こえてくる。
あまりのタイミングのよさに、思わず頬が緩む。
今日はどこでお昼にしましょうか、と彼女が思った、その時だった。

「あら、貴女はお腹が空いているのかしら?」
「…………?」

突然聞こえた声に驚き辺りを見渡す彼女。だが、特に何かが見つかるわけでもない。
幻聴ですかね、と彼女は自分の耳を疑う。
そして、何やら恐ろしくなってきた彼女は、急いでこの場を後に―――

「無視するとは、良い度胸ね」

突然現れた、生首が、目の前に。
彼女はそこまで確認すると、ゆっくりと口を開き、

「―――きゃぁぁぁあああ!!!」

回れ右して逃げ出した。
先ほどまでのゆっくりとした飛び方とは違い、全力疾走だ。
もし、この場に彼女の事を知る者がいるとすれば、きっと驚いただろう。それほどまでに彼女は速かった。
今の彼女は、どこぞの烏天狗ですら敗北を認めるほどの速さだった。故に、生首は彼女に置いてけぼりを食らうという結果になる。
どこまで逃げたのだろうか。
乱れた髪と服装から、彼女がどれほど必死だったのかがわかる。
彼女は荒い息を抑えつつ再び辺りを見回し、なんとか生首から逃げ切ったことを確認した。
そこまでして、ようやく彼女はゆっくりと深呼吸を開始。
……助かりました。
長い息を吐いて、安堵の表情を浮かべる彼女。

「……いきなり逃げるなんて酷いわね」

再び目の前に現れた生首に、彼女の思考が停止する。
そして、恐怖から悲鳴を上げようと口を開く。
しかし、その生首は彼女よりも先に動いていた。
突然、虚空から2本の腕が現れると、そのまま彼女の口をふさいだ。

「ん――――っ!!」
「ちょ、ちょっと……暴れないの!」

いきなり口をふさがされたら、誰だって暴れる。
しかし、彼女はここでようやく目の前の生首の正体に気がついた。
生首や腕は空間の裂け目から生えてきており、彼女はそれを知っている。
それはスキマと呼ばれるものであり、生首の正体は―――

「……ようやく落ち着いたのね、衣玖」
「……何をやっているんですか、紫さん」

柔らかくもどこかいやらしい笑みを浮かべた八雲紫に、衣玖は呆れ顔で尋ねた。

「それで……どのような御用件でしょうか?」





紫に捕まえられた衣玖は、その後、八雲家へと連れていかれた。
どうしてかと尋ねると、藍が先日のケーキの件について気になっているという話だった。
そう言えば報告がまだでした、と気づいた衣玖は、せっかく協力してくれた藍に対して申し訳ない気分になり、自分を恥じるしかなかった。
そして衣玖は、八雲家に到着してすぐ、家に居た藍に先日の報告を済ませたのだ。
結果的には成功だったということを報告すると、藍はまるで自分の事のように喜んでくれた。衣玖としては、話を進めるにつれ恥ずかしい思い出が蘇り、だんだんと恥ずかしくなり顔を赤らめていったのだが。
しかし、何故か話が進むごとに紫の機嫌が悪くなっていくのを感じた2人は、あえて気付かない振りをすることで話を終わらせることに成功した。
そうして報告が終了すると、今まで全く口を開くことのなかった紫が突然、

「そう言えば藍、彼女もお昼がまだみたいよ」
「そうでしたか、それではお二人はこれから遅めの昼食ということで―――」
「いえいえ、お気づかいはいりませんよ、もうお暇しますから」

そう言って腰を上げようとする衣玖を、紫は手で制し、

「いいのよ私もまだなんだから、それとも私に寂しいお昼を過ごさせるつもりなのかしら?」
「ですが……」

申し訳なさそうな顔で藍を見る衣玖。しかし、藍は笑みを返してから部屋を出て行った。
それを、紫の意見の尊重だと受け取った衣玖は、ひとまず言われた通りにすることにした。
そして部屋に残される衣玖と紫。訪れる気まずい空気。
別に衣玖は紫の事が嫌いなわけではないので、普段であれば特に問題はないはずなのだ。
しかし、何故か今の紫は不機嫌であり、そのために雰囲気が悪くなってきている。
それは空気を読む程度の能力を持つ衣玖でなくとも、明らかに分かることだった。
衣玖はひとまずこの場を離れて、藍の手伝いをしようかと考え始めた時だった。
俯きがちだった紫が、突然衣玖の方へ向き直り、

「……質問を一つしてもいいかしら」
「ど……どうぞ」

この状況で、一体何を聞かれるのだろうかと衣玖は怯える。
その間、紫は何やら考え込んでいたのだが、意を決した様子で尋ねた。

「……貴女は天子のことを…どう思っているのかしら?」
「……はぁ?」

いきなりな質問に、お前は何を言っているんだ、と衣玖は質問の意図を考える。
まず、質問した紫の不機嫌の原因が関係してくるのであろう。
不機嫌になり始めたのは、衣玖が先日の報告を始めてからだ。
特に、ケーキを潰してしまった後のことを話すときに不機嫌のピークを迎えていたことを思い出す。その時、紫が持っていた湯のみが粉々に握りつぶされていたことを衣玖は思い出すのだが、あえて気にしないように努めた。
ここで、衣玖はあることに気付いた。それは、紫は天子の話題が出るたびに何らかの反応を示していた、ということだ。
そして先日、衣玖がケーキ作成を藍に手伝ってもらっていた時の事だ、藍は快く手伝ってくれていたのだが、紫は度々妨害してきた。
これらの情報を統合すると、つまり紫が言いたいことは、「私の天子に気安く近づいて……どうなるのか分かっているのかしら?」ということであろう。
紫は何だかんだ言いつつも、天子の事を気にかけている。つまり、紫は天子の事が好きなのだろう。
衣玖はそこまで考えて、ちらりと紫を見、すぐに視線をそらした。
なにしろ衣玖は気付かなかったのだが、紫は衣玖をずっと凝視していたからである。
背中に嫌な汗が流れるのを感じながらも、衣玖は空気の読める回答を考える。
……一歩間違えれば大変なことになりますね。
しかし、今こそ衣玖の能力が発揮される状況である。衣玖は絶対の回避策を思いついたのだ。
成功を願いつつも、衣玖は紫に言った。

「ゆ、紫さんはどう思っているんですか?」

……決まった、と衣玖は勝利を確信した。このカウンターならば相手の動きが読め、なおかつ、今後の行動を選択することが容易になる。
これで後は流れに任せていけばいい、と衣玖は単純に思っていた。

「今は衣玖がどう思っているのかを聞いているのよ、私の事なんてどうでもいいでしょう?}
「――――っ!?」

笑みを湛えて紫は答えた。笑顔ではあるが、有無を言わせない紫の雰囲気に、衣玖は言葉を失うしかない。
そして逃げ道が潰されたことを感じた衣玖は焦り、怯える。こうして考えている間も紫は衣玖を見ているのだ。
ここは当たり障りのない回答を、と衣玖は考え、

「総領娘様はとても良い方ですよ。私のような者にも優しく―――」
「あら? 私の聞きたいことを答えたくないのかしら。そんなことを聞きたい訳じゃないわ―――わかっているでしょう?」

ますます重くなる空気、訪れる気まずい時間。
今の空気を色で表現すると、どろどろした黒と、ほんの少しの紅。BGMには何やらサスペンス的な音楽が聞こえてきそうだ。
こんな状況に出来るなんて流石紫さん、と衣玖はこっそり心の中で感心する。そして、少し時間を稼ごうと思いひとまず口を開く。

「―――そ、そう言えば、藍さんは何を作っているんでしょうね!?」
「何を? そうねぇ……」

衣玖は特に考えもしないで言ったのだが、どうやら紫の気をそらすことに成功したようだ。何やら考え込んでいる紫を見て、安堵する衣玖。
このまま話題が切り替われば、と思っている衣玖に向かって紫は言った。

「……今日は珍しい食材が手に入ったのよ」
「そうですかー、それは楽しみですねー」
「そうなの、私もずっと楽しみにしていたのよ」
「へぇ……どんな食材なんですか?」

話題を変えようと必死な衣玖は気付かなかった。紫の目が怪しく光っていることに気付く事ができなかった。
それは一瞬の間に起こった。紫は不意をついて衣玖を押し倒し、動けないように体の上に乗り片手で衣玖の両腕を押さえる。
そこまで状況が進行してから、ようやく衣玖は自分の置かれた状態に気付いた。
……しまった、選択肢を間違えてしまいました! これは明らかに私の態度への怒りに違いありません!
抜け出そうともがく衣玖だが、紫は涼しい顔でビクともしない。

「な、何をするんですかっ!」

パニックに陥った衣玖はもう、抜け出すことしか頭にはない。
そんな衣玖に対して紫は笑みを深くして答えた。

「生きている竜宮の使いなんて珍しい食材よね、そう思わない?」
「珍しい食材って私の事ですかっ!?」
「どんな味なのか、ドキドキしてきたわね……」
「いやいや! 私なんて食べてもおいしくないですよ絶対!!!」
「食べてから判断するわ――――いただきます」

そう言って紫は衣玖の首筋に顔を近づける。
その間必死にもがく衣玖だったが、やはり紫は動かない。電撃を放てば良いのだが、今の彼女はその発想に至ることがない。
そして紫は、味見というように舌を伸ばして――――

「―――ひゃぅ!」

背筋に電流が走ったような感覚を受け、衣玖はたまらず悶える。
それに気をよくしたのか、紫は2回3回と味見を繰り返し、その都度衣玖は身を捩る。
それがしばらく続いた後、不意に紫は首筋に歯を立て、軽く噛みついた。
衣玖は、自分の首が噛まれていることに恐怖し、体が震え出すのを感じた。
食べられる、そう思った時には既に涙が一筋、また一筋と流れ出し、ついには嗚咽が漏れ始めた。
すると突然、紫は衣玖の拘束を解き、衣玖から離れた。

「いやねぇ、冗談よ。何も泣かなくたっていいじゃないの」
「じょ……冗談では済まされませんよ!!!!」
「そこまで嫌がられるなんて……」
「本当に食べられるかと思いましたよ!」

傷ついたような表情を浮かべる紫、半泣きで捲し立てる衣玖。
紫は衣玖をなだめようとするのだが、なかなか涙は止まりそうにない。
流石にやりすぎた、そう思ったのか紫はどこからともなくハンカチを取り出し、衣玖の涙を拭おうとするが、衣玖は警戒して紫から離れる。
痺れを切らした紫は、手を伸ばして強引に衣玖を抱き寄せる。
不意を突かれた衣玖は、そのまま顔を紫の胸にうずめることになった。
そして紫は落ち着かせるために、抱きしめたまま衣玖の背中を優しく撫ぜ始める。
最初は離れようとしていた衣玖だったが、次第に落ち着きを取り戻す。何やら言いようのない安らぎを覚える衣玖だったが、流石にこの状態が続くのはまずいと思い紫から離れようと背中を叩く。
しかし、

「……もう少しだけ、ね?」

衣玖からは紫の顔を見ることはできないが、その声を聞くと先ほどまでの不機嫌な様子は感じられない。むしろ、どこか穏やかな様子であり、自分からこの雰囲気を壊して先ほどの状況に戻すなんてことは衣玖としては望まない。
それに衣玖にしてもこの状態が気に入らないわけではなく、どこか勿体ない気がしたので、しばし紫に身を委ねることにした。
二人の抱擁はしばらくの間続くことになる。






「ねぇ藍さま、紫さまは何をなさっているんですか?」
「橙にはまだ早いよ……気にせずに遊びに行ってきなさい」
「わかりました、それでは……藍さまのお手伝いをさせて下さい」
「――――!? あぁ橙……お前はなんて優しい子なんだ!」
「ら、藍さま……苦しいです……」





「すいません、夕食まで頂いてしまって……」
「いいのよ、大勢で食べる方がご飯も美味しいでしょう?」
「そうですね、ありがとうございました」
「どういたしまして」
「でも、わざわざ送って頂かなくても」

夕食を終えて、さて帰ろうという時、紫は突然衣玖を送って行くと言い出した。
最初はやんわりと断った衣玖だったが、夜道は危ないなどと紫が言うので頷くしかなかった。
どうせならスキマで送ってくれればいいのに、と衣玖は思う。
しかし、何故か紫はスキマを出さずに、面倒な手段を選んだのだった。これには、衣玖としても若干の警戒を抱くしかない。もしかすると、先ほどの恨みから暗い夜道で衣玖を背後から(自主規制)するかもしれないのだ。
だから出来るだけ衣玖は紫と並んで飛行するようにしている。もしもの時に対応しやすいからだ。
そしてその間、衣玖は紫と色々な事を話した。それほど難しい話はせず、気軽な話題ばかりではあったが、今まで紫とそこまで会話したことのなかった衣玖は、紫の印象を改める必要があることを感じたのだった。
そして、懸念していた天子の話題を出した時も、紫は不機嫌な様子になることはなく、衣玖の話を促すようにしていた。
……どうしてあんな質問をしたんでしょうか。
と衣玖が考え始めた時だった。

「い―――く――――っ!!!」

遠くの方から衣玖を呼ぶ声が聞こえた。思わず声がした方に振り向く紫と衣玖。
暗闇から現れた、その姿は、

「……総領娘様、どうしてこちらに?」
「もう、天子って呼びなさいって言ったでしょ!?」
「……すいません、ですが夜道は危険ですから、一人で出歩かないようにと言ったはずですよ」
「そんなことはいいのよ、それよりも今日はどこに居たの? 探してたんだから」
「はぁ、今日は紫さんの所にお邪魔になって―――」
「あら、誰かと思えば……天子じゃないの」

天子と衣玖の間に割り込む紫。その顔は笑ってはいるが、どこかで見たような笑みである。
衣玖は嫌な予感を抱くのだが、天子はそれに気付かず、

「……紫、私の衣玖がどうもお世話になったみたいね」
「ええ……それよりも先日の私からのプレゼント気に入ってもらえたかしら?」
「……プレゼント?」
「貴女の誕生日に送ってあげたじゃない、貴女が一番欲しい物を」
「そうだったかしら……身に覚えはないけど、貴女の式には感謝しておくわ」
「式の功績は主である私の功績、お褒め頂き光栄ですわ、天子様」
「口の減らない妖怪ね……」
「それよりも衣玖に何の用があったの?」
「貴女には関係ないでしょ」
「関係あるわよ、これでも衣玖には色々と構ってあげているんだから」
「……そうなの?」

尋ねる様に衣玖に顔を向ける天子。とりあえず、世話になっているのは事実なので、衣玖は頷くことに。
紫の言った事が事実だとわかると、天子は顔を少し赤らめながらも言った。

「……特に用があったわけじゃないけど、衣玖と一緒に過ごしたかっただけなのよ、悪い?」
「別に悪いなんて言ってないでしょう? 理由が聞きたかっただけ」
「そう……わざわざ衣玖を送ってもらって悪かったわ、でも後は私が送るから」

そう言って天子は衣玖の手を握り、この場を後にしようとする。
しかし、紫は天子の前に立ち塞がると、微笑みながら言った。

「私が衣玖を送って行くから大丈夫よ……貴女は今すぐ自分のお家に帰りなさい」
「……ふーん、私の邪魔をしようってわけね」
「そういうことじゃないんだけど、何を思うのかは貴女の勝手よ」
「……もし、親切心で言ってるなら、それは余計な御世話だから」
「……私が親切心で言っていると思っているの?」
「そんなことはないわよ、貴女が見返りもなしに誰かに親切にするはずもないんだから」
「あらあら、分かっているじゃないの」
「貴女は私の邪魔をするのが好きだものね……どうしてそんなことをするのか教えてもらいたいわ」
「あら、教えてほしいの?」

そう言って紫は衣玖をちらりと見遣る。その顔にはどこか期待を込めたような笑みが浮かんでおり、衣玖は、もしかして紫がここで天子に告白するのでは、と思うのだった。
そして紫は天子を向くと、

「それじゃあ、どうして私が貴女の邪魔をするのか教えてあげる」
「……あんまりいい予感はしないけど、教えてもらえるならありがたいわね」
「まあ、貴女の勘違いがほとんどなんだけど……一つだけ貴女の邪魔をしていたことがあるわ」
「……勘違い? 一つだけ? 何を言っているの?」
「私の目的は一つだけだったのよ、でも、それは貴女にとっては重要だったから、色々と私から邪魔されたと思ってしまっても無理はないみたいね」
「だ、だからそれは何なのよ!?」

思わず息が荒くなる天子、対照的に紫は落ち着きを見せている。
そして、目の前で繰り広げられている愛憎劇を見ている衣玖は、言いようのない高揚感を感じた。
とりあえず背景になることに徹する衣玖は、紫の告白を今か今かと見守っていた。目の前で起こっていることは、衣玖にとってはどこか別の世界の事のように思えてしまい、ひとまず見守るという選択肢以外、今の衣玖には存在しなかったのだ。
しかし、事態は思いもよらない方向へと進んでいくのだった。

「私の目的……それはね」
「……それは?」

いきなり紫は衣玖へと手を伸ばし、その腕を掴んで抱き寄せる。そしてそのまま両手で衣玖の顔をホールドすると顔を近づけて、

「―――んっ!?」

あまりの行動の速さに反応の遅れた衣玖はされるがまま。
数秒間その状態が続き、思わず天子も呆然とそれを眺めるしかなかった。
そして紫と衣玖の顔が離れる。どこか満足気な紫と呆気に取られる衣玖、呆然と立ち尽くす天子。
最初に動いたのは天子だった。

「あ……あんた…な……何を?」
「あら、見てわからなかったの? それじゃあもう一回」

そう言って紫は再び顔を近づける。もはや正常に思考が働いていない衣玖と再び唇が重なる。

「ちょ、ちょっと離れなさい!」

堪らず天子は紫と引き剥がそうとするが、全く動く事はない。
それどころか、紫は衣玖から顔を離すと完全に天子を無視したまま、衣玖に向かって話しかける。

「私がどうして親切に貴女の相談に乗ってあげていたのか、理解できたかしら?」
「――――っ!?」

紫に話しかけられたことでようやく正気に戻った衣玖は、自分が何をされたのかを理解し、物凄い速さで顔を真っ赤に染め上げた。
衣玖にしてみれば、自分は観客だと思っていたら実は主役だった、何を言っているのか理解できねぇ、ということが起こっているのだ。
しかし、そんな衣玖に構わず紫は話を続ける。

「つまり、私は貴女のことが好きなのよ、これで理解できた?」
「……はぁ?」
「まだあんまり理解できてないみたいだけど、これは冗談なんかじゃないわよ。私が今日不機嫌だったことに気付いているでしょう? 貴女があんまりにも天子の話ばかりするからちょっとイライラしてたのよ」
「あの……つまり……要約しますと…紫さんが私の事を好きということですか?」
「要約も何も……最初っからそう言ってるじゃない、鈍感なのは困るわねぇ鈍感なのは」
「そ、そんなの気付く訳ないじゃないですか!?」
「あら、今気付いたじゃない……返事はもらえないの?」
「そ、それは……」

衣玖は考える。確かに紫が言っていることは筋が通っている。不機嫌だった理由、質問の本当の意味、どれを取っても、今の答えで回答が得られる。
そして、紫の今の表情は真剣そのものだ。これで冗談でした、なんてことを言うとすれば、よほど上手な演技だったということになるが、それを見破る術はこちら側にはない。
では、本当だとして、どのような返事を返すべきなのだろう。
自分は紫の事は嫌いではない。かと言って好きなのか、そう問われれば頷くこともできないだろう。
なにしろそれほど付き合いが深いわけでもないからだ。今この場で返事を返すのは性急すぎるのではないか。
そして、最大の問題は―――

「どうして、私を無視してるのよ!!!!」
「あら、居たの?」
「最初から居たわよ! そんなことよりも、私の衣玖から離れなさい!」
「何時貴女の物になったのよ」
「私の誕生日にプレゼントしてくれたんじゃないの?」
「……あれはケーキをプレゼントしたのよ、材料的な意味で」
「そんなことはどうでもいいわよ!」
「よくないわ、貴女にはケーキをあげたんだから、貴女は私には衣玖をあげるのが常識じゃないのかしら?」
「そんな常識この世界にはないわよ!」
「幻想郷にいる限り常識に囚われていてはいけないわ……」
「常識について言い出したのはあんたの方からでしょうが!! そもそもあんたがどうして衣玖を好きになるのよ!?」
「あら、衣玖って虐めたくなるくらい真面目で可愛いじゃない。それに、こんなに恥ずかしがって……ゾクゾクするわね」
「……なんか、あんたにだけは衣玖を渡しちゃいけない気がしてきた」
「あら、奇遇ねぇ私もそう思うわ」

そして紫は衣玖を離すと、自分の背後に回らせる。
それに大人しく従う衣玖を見た天子は、

「待ってなさい、私がすぐにそいつから助けてあげるわよ」
「それはこちらの台詞……すぐに終わるから返事を考えておいてね」

そして始まる弾幕勝負。その激しさはまさにルナティック級。思わず衣玖も我を忘れて見とれてしまうほどである。


非常にくだらない理由で始まった弾幕勝負の結果は、夜遅くまで続き、最終的にはうるさくて眠れないと怒ってやってきた巫女によって終了を迎えることになるのだった。


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鹿山アトリ

Author:鹿山アトリ
もみあや大好き。あとにとひなも。
と言いつつ、雑食気味に色々書いていきます。

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